ブランドを持つアパレル企業の譲渡では、商品や在庫だけでなく、商標、ライセンス、企画資料、顧客と販路をどの範囲で引き継ぐかを整理します。三共生興によるLEONARD FASHION SASの株式取得に関する公式発表を参照し、中小ブランドの売り手が準備したい資料と条件を解説します。
参照する取引は当事者の公表情報に基づき、当センターの成約実績ではありません。以下では、発表された事実と、ブランド承継についての一般的な実務解説を分けています。
公式発表で確認できるLEONARDの株式取得
三共生興は2022年6月23日、LEONARD FASHION SASの全株式を取得して子会社化する決議を行い、同日に株式譲渡契約を締結したと発表しました。対象会社の事業は、アパレル製品等の製造・販売とライセンス事業です。
発表では、1971年の独占輸入販売契約以来の取引関係を説明したうえで、一貫したブランド戦略や事業展開の拡大を取得の理由に挙げています。取得価額は非開示で、発表時点の株式譲渡実行予定日は2022年7月19日でした。本節は2022年6月23日の発表内容を整理したものです。三共生興の公式発表(2022年6月23日・PDF)
ブランドの権利と、利用している資産を分ける
ここからは個別取引の詳細や買収効果の説明ではなく、自社ブランドの譲渡準備に向けた一般的な確認事項です。ブランドを続ける条件を伝えるためには、名前の認知度と、次の経営者が使える権利・資料を分けて整理する必要があります。
商標・ライセンス
商標の登録名義、対象の商品・役務、国・地域、更新時期を一覧化します。会社が保有する権利、創業者個人の権利、他社から使用許諾を受ける権利は別々に確認します。ライセンスやコラボ契約は、期間、ロイヤリティ、販売地域、商品区分、契約の譲渡・変更条件を契約書で確認してください。
デザイン・写真・アーカイブ
過去の柄、型紙、仕様書、LOOK、商品画像、広告素材について、保管場所と制作・使用の契約を整理します。外部デザイナーや撮影者の作品は、データを保管しているだけで利用範囲が決まるものではありません。復刻や新商品への利用、譲渡後の使用を検討するときは、権利者と許諾条件を確かめます。
ブランドの特徴を売上・粗利と結び付ける
ブランドの沿革や世界観は、定番商品の販売実績と合わせると具体的に伝えられます。ブランド別・品番別・販路別の売上と粗利を、定番、季節商品、コラボ商品などに分け、値引きや返品も含めて確認します。過去に人気があった商品と、現在も継続して売れている商品は区別してください。
在庫は数量・原価だけでなく、シーズン、滞留期間、販売実績、返品予定を整理します。卸、店舗、EC、催事ごとの採算と在庫の動きをつなげ、強い販路と改善が必要な販路を説明します。公表されていない買収価格や、他社のブランド評価を自社の売却相場として用いることはできません。
顧客基盤は、会員・フォロワーの人数に加え、再購入や購入周期などの集計で示します。ECカート、モール、決済、ドメイン、SNSはそれぞれの名義と契約条件を確認し、顧客データの利用目的や開示方法も別途整理します。
創業者が離れた後の企画と運営を考える
デザイナー、MD、パタンナー、販売員、EC担当者、OEM先が担う業務を一覧にします。創業者しか決められないデザイン判断、発注量、価格設定、取引先との調整があれば、引継ぎ期間と役割を検討します。ブランド名、商品方針、スタッフ、店舗をどう残したいかも、価格とともに協議する条件です。
候補先を検討する際は、同業であれば商品・販路の重なり、EC企業であれば運用・物流、投資会社であれば後継経営体制など、補完できる機能を確認します。業種だけで決めず、誰が企画・販売・生産を担当するか、必要な投資をどう行うかまで話し合います。
相談前に揃えておきたい資料
- 決算書・月次試算表、ブランド別・販路別の売上と粗利
- 商品台帳、SKU別の在庫・販売実績、返品・委託条件
- 商標登録情報、ライセンス・コラボ契約、制作物の権利資料
- 店舗賃貸借、卸・仕入・OEM・物流の主要契約
- 企画から販売までの担当業務と、譲渡後も守りたい条件
会社全体の株式譲渡か、ブランド・EC・店舗など一部事業の譲渡かによって、契約・雇用・権利の扱いが異なります。資料は分かる範囲から準備し、社名、取引先名、顧客情報の開示先と時期を確認しながら進めます。
ブランドの譲渡可能性を相談する
詳しい確認事項はブランド・メーカーのM&Aで紹介しています。アパレルM&A総合センターの譲渡相談では、売却を決める前から事業と希望条件を整理できます。譲渡企業様から当センターが受領するM&A支援手数料は成功報酬まで0円です。外部専門家などの第三者費用は対象外です。
