はじめに|サングラス・眼鏡フレームメーカーのM&Aが注目される理由
サングラス・眼鏡フレームメーカーとは、金属・チタン・アセテート(プラスチック)などを素材に、眼鏡フレームやサングラスの企画・設計・製造を行う事業者を指します。近年、この業界では事業譲渡や事業承継を目的としたM&Aが急速に増えています。背景にあるのは、経営者の高齢化と後継者不足、輸入品との価格競争、そして大手アイウェアチェーンによる製造機能の取り込みです。長年培った加工技術やブランドを次世代へ確実に引き継ぎたいと考えるオーナーにとって、M&Aは廃業を回避し、従業員と技術を守るための有力な選択肢となっています。本記事では、譲渡を検討する売り手オーナーの視点で、業界の現状からバリュエーション、実際の事例、成功のポイントまでを徹底解説します。
サングラス・眼鏡フレームメーカー業界の現状と市場動向
結論として、眼鏡フレーム業界は国内市場が堅調に推移する一方、国産フレーム製造は産地の集約と後継者不足という構造的な課題に直面しています。
国内アイウエア市場の規模は、小売金額ベースで2021年に4,768億円、2022年に4,918億円と推計され、堅調に拡大しています。ブルーライトカット眼鏡、高価格帯の国産フレーム、UVカット機能を備えたサングラスの需要が市場を下支えしています。眼鏡は視力矯正の必需品であると同時に、ファッションアイテムとしての側面も強く、景気変動の影響を受けにくい安定した需要が特徴です。
国産フレーム製造の中心地は福井県鯖江市です。鯖江は「メイドインジャパン」フレームの国内生産シェアの9割以上(約96%)を占め、100年以上の歴史のなかで培われた金属加工・研磨技術を強みとしています。1980年代に世界へ先駆けてチタンフレームを実用化したのも鯖江であり、軽量・高強度・金属アレルギーに強いフレームは世界的にも高く評価されています。
サングラス分野も、UVカットや調光レンズへの関心の高まり、アウトドア・スポーツ人気を背景に堅調です。国産の高品質フレームは、海外の高級アイウェアブランド向けOEM(相手先ブランド製造)としての需要も根強く、輸出を通じた成長余地を残しています。こうした技術資産は、M&Aにおいて買い手が高く評価する要素となります。
一方で、グローバル市場での存在感は低下しています。かつて世界の眼鏡生産量の約20%を占めた鯖江産地のシェアは、中国をはじめとするアジア勢の台頭により、現在では0.5%程度まで縮小しました。国内でも、低価格の輸入フレームやSPA型(製造小売)チェーンの拡大により、独立系フレームメーカーの価格競争は激化しています。
業界特有の課題は次の3点に集約されます。第一に、職人の高齢化と技術継承の困難です。研磨・ロウ付け・蝶番(ちょうつがい)加工などの工程は熟練を要し、担い手の減少が生産能力に直結します。第二に、小ロット・多品種化に伴う設備投資の負担です。第三に、為替や原材料(チタン・アセテート)価格の変動リスクです。これらの課題を単独で乗り越えることは難しく、資本力のある企業との連携を模索する動きが強まっています。実際、大手チェーンが鯖江の自社工場を拡張し、フレーム生産能力を増強する動きも見られ、産地の再編と設備集約が進んでいます。
サングラス・眼鏡フレームメーカーでM&A・事業承継が増加している背景
結論として、後継者不足と競争環境の変化という二つの圧力が、フレームメーカーのM&A・事業承継を強く後押ししています。
1. 経営者の高齢化と後継者不足
鯖江産地をはじめとする眼鏡フレームメーカーの多くは、家族経営の中小企業です。中小企業経営者の高齢化は全国的に進行し、後継者が決まっていない企業が依然として多く残っています。技術力の高い工場であっても、後継者が不在であれば廃業に追い込まれ、長年培った加工技術が失われてしまいます。M&Aは、こうした技術と雇用を第三者へ確実に引き継ぐ現実的な手段です。
2. 競争環境の変化と価格圧力
低価格の輸入フレームや、JINS・Zoffに代表されるSPA型チェーンの拡大により、独立系メーカーの取引条件は厳しさを増しています。とりわけ自社ブランドを持たないOEM専業メーカーは、受注量や単価が発注元に左右されやすく、経営の安定に課題を抱えています。販売力を持つ企業グループの傘下に入ることで、安定した受注を確保する動きが加速しています。
3. 製造機能の取り込み(垂直統合)ニーズ
大手アイウェアチェーンやブランドは、品質管理・納期・独自性を高めるため、フレームの企画・製造機能を自社グループに取り込む動きを強めています。売り手にとっては、販売網を持つ相手へ事業を譲渡することで、安定受注と成長投資を同時に確保できるメリットがあります。
4. DX・海外販路強化の必要性
ECやSNSを活用した販売、越境ECによる海外展開には、一定の投資と専門人材が必要です。資本力のあるグループの傘下に入ることで、単独では難しかった投資や販路拡大を実現できます。
売り手にとってのM&Aは、単なる「事業の出口」ではありません。従業員の雇用維持、ブランドの存続、技術の継承、そして創業者利益(譲渡対価)の確保を同時に実現できる、前向きな経営判断といえます。
サングラス・眼鏡フレームメーカーのM&Aにおける相場・バリュエーション
結論として、フレームメーカーの企業価値は「年買法(時価純資産+営業利益の数年分)」を基本に、ブランド力・技術・顧客基盤といった無形資産を加味して評価されます。
中小規模のM&Aでは、時価純資産に営業利益の3〜5年分(のれん)を加算する年買法が実務上よく用いられます。安定した黒字と独自技術を持つ工場は、のれんが高く評価される傾向があります。より規模の大きい案件では、将来キャッシュフローを割り引くDCF法や、同業他社の取引倍率を用いるEBITDAマルチプル法が併用されます。
眼鏡フレームメーカー特有の評価ポイントは次のとおりです。
- 技術・設備:チタン加工、ロウ付け・蝶番などの独自工程、稼働率の高い専用設備
- ブランド力:自社ブランドの認知度、ライセンス、意匠権・商標などの知的財産
- 顧客基盤:チェーン・百貨店・海外バイヤーなど安定取引先との継続的な関係
- 職人・技術者:熟練工の在籍状況と、技術継承の仕組みの有無
- 在庫と原価管理:適正在庫、歩留まり、原材料調達の安定性
これらの無形資産を「見える化」できているかどうかが、最終的な評価額を大きく左右します。決算書に表れない技術や取引関係こそが、フレームメーカーの価値の源泉です。
サングラス・眼鏡フレームメーカー業界のM&A事例
結論として、近年は「フレームメーカー同士の連携」と「販売チェーンによる製造・小売の取り込み」の双方でM&Aが活発化しています。以下、公開情報に基づく代表的な事例を紹介します。
事例1:アイヴァンによる三工光学のグループ会社化(2024年)
アイウェアブランドを展開するアイヴァンは、2024年7月、三工光学と資本業務提携を結び、グループ会社化しました。三工光学は1923年(大正12年)創業、約100年にわたり眼鏡フレームやサングラスの企画・製造・販売を手がけてきた老舗メーカーです。長年培った製造技術と、アイヴァンのブランド・企画力を融合させ、商品開発力の強化を図る狙いがあります。技術を持つメーカーが、ブランドと販売力を持つ企業グループへ加わる、フレームメーカーM&Aの典型例です。
事例2:エシロールルックスオティカによる和真の買収(2024年)
2024年7月、世界最大のアイウェア企業エシロールルックスオティカの日本法人が、老舗眼鏡専門店「和真」を買収しました。小売の事例ではありますが、グローバル大手が日本市場での供給網とブランドを強化する動きであり、フレーム製造にも波及する象徴的な再編です。
事例3:ジャパン・アイウェア・ホールディングスによるハンズの完全子会社化(2025年)
2025年5月、後継者問題に直面していた眼鏡関連企業「ハンズ」が、ジャパン・アイウェア・ホールディングスの完全子会社となりました。後継者不足を背景としたM&Aが、事業と雇用の継続を実現した好例です。
事例4:インターメスティック(Zoff)によるメガネスーパー等の買収(2024〜2025年)
「Zoff」を展開するインターメスティックは、メガネスーパーなどを運営するHorusを買収し、グループ店舗数は600店を超えました。同社の売上高は約448億円規模で、買収対象の売上高も約281億円に達する大型再編であり、業界は3強体制へと移行しています。川上のフレーム調達・製造にも影響を及ぼす動きです。
事例5:大手チェーンによる鯖江フレーム工場の拡張投資(2025年)
「眼鏡市場」を展開するメガネトップは、2025年に鯖江の自社工場を拡張し、フレーム生産能力を倍増させる方針を打ち出しました。M&Aそのものではありませんが、販売チェーンが国産フレームの製造・供給網を自社に取り込み、内製化を強める動きの一例です。産地の生産機能をめぐる争奪が強まっていることを示しており、技術を持つフレームメーカーにとっては、譲渡先としての選択肢が広がっていることを意味します。
これらの事例に共通するのは、単独では困難な成長・存続の課題を、資本提携やグループ化によって解決している点です。売り手企業は、技術・ブランド・雇用を守りながら、次の成長ステージへと進んでいます。関連する服飾雑貨分野の事例は、ジュエリー・アクセサリーブランドのM&A記事やバッグ・鞄メーカーのM&A記事でも詳しく解説しています。
サングラス・眼鏡フレームメーカーのM&Aを成功させるためのポイント
結論として、M&A成功の鍵は「技術・ブランドの価値を客観的に示す準備」と「従業員・取引先への丁寧な配慮」にあります。
売り手が準備すべき主な項目は次のとおりです。第一に、財務・税務の整理です。決算書の正確性、在庫評価、簿外債務の有無を明確にしておくことで、デューデリジェンス(買収監査)がスムーズに進みます。第二に、技術・知的財産の棚卸しです。保有する意匠権・商標、独自工程、主要設備の状態を文書化し、無形資産を「見える化」します。第三に、主要取引先との契約関係や、熟練工の在籍・技術継承の状況を整理しておくことです。
デューデリジェンスで特に重視されるのは、収益の安定性、特定取引先への依存度、技術者の定着状況、在庫の健全性です。また、従業員・取引先への配慮も欠かせません。情報開示のタイミングを誤ると、人材流出や取引縮小を招くおそれがあるため、秘密保持を徹底し、適切な段階で丁寧に説明することが重要です。相手先の選定から交渉、契約、統合(PMI)まで、アパレル・ものづくり業界に精通したM&Aアドバイザーと一貫して連携することが、成功への近道となります。子供服メーカーのM&Aなど、他のものづくり企業の承継事例も参考になります。
サングラス・眼鏡フレームメーカーのM&A・事業承継ならアパレル業界M&A総合センターへ
アパレル業界M&A総合センターは、アパレル・ファッション関連業界に特化したM&A仲介機関です。サングラス・眼鏡フレームメーカーをはじめとするものづくり企業の事業承継について、業界特有の商習慣や技術評価を熟知した専門家が、最適なマッチングをご提案します。
当センターの最大の特徴は、売り手(譲渡企業)の仲介手数料が無料である点です。譲渡をご検討のオーナー様は、費用のご負担なくご相談いただけます。また、秘密保持を徹底し、従業員・取引先に知られることなく、安心してM&Aを進められる体制を整えています。ブランドと技術、そして大切な従業員の雇用を守りながら、次の世代へ事業をつなぐお手伝いをいたします。まずはお気軽に無料相談をご利用ください(電話:03-4560-0084)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 譲渡にかかる費用はどのくらいですか?
A. アパレル業界M&A総合センターでは、売り手側の仲介手数料は無料です。費用の心配なく、安心してご相談いただけます。
Q2. M&Aの検討から成約まで、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 案件により異なりますが、一般的には相手先の選定から成約まで6か月〜1年程度が目安です。事前準備が整っていれば、期間を短縮できる場合もあります。
Q3. 従業員の雇用は守られますか?
A. 多くのM&Aでは、雇用や労働条件の継続を前提に交渉を進めます。従業員の処遇は契約条件として明確化でき、当センターも雇用維持を重視して交渉を支援します。
Q4. 取引先や従業員に知られずに進められますか?
A. 可能です。秘密保持契約(NDA)を締結し、情報開示は必要最小限かつ適切な段階に限定します。検討段階で外部に情報が漏れることはありません。
Q5. 赤字や小規模の工場でも譲渡できますか?
A. できます。独自の加工技術、熟練工、安定した取引先基盤などは、決算数値に表れない高く評価される無形資産です。まずは一度ご相談ください。

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