縫製工場やOEM/ODM事業の承継では、設備の台数に加えて、技術者、品質管理、受注、生産ネットワークを引き継げるかが検討事項になります。東洋紡グループとTSIホールディングスの公表事例を確認し、中小の縫製事業者が売却・事業承継の相談前に整理したい資料を紹介します。
掲載する取引は、当事者の公式発表を参照したものです。当センターの成約実績ではありません。公表された事実と、その後の一般的な実務解説を分けて記載しています。
公式発表で確認できる2つの取引
東洋紡グループによるSTGガーメントの完全子会社化
東洋紡は2022年7月1日、同社グループが6月30日にインドネシアの縫製会社STGガーメントの全株式を取得したと発表しました。同社はニット・布帛シャツ製品を製造する会社です。東洋紡は、意思決定を速め、日本向けの繊維製品供給体制を強める狙いを説明しています。東洋紡の公式発表(2022年7月1日)
TSIホールディングスとシタテルの資本・業務提携
TSIホールディングスは2022年7月13日、シタテルとの資本・業務提携契約と第三者割当増資の引受決定を公表しました。発表時点の取得予定比率は5.2%です。小中規模ブランドの生産支援や、米沢工場を中心とした国内縫製ネットワークの構築などを提携内容に挙げています。TSIホールディングスの公式発表(2022年7月13日・PDF)
売り手が整理したいのは「次の経営者が運営できる条件」
ここからは、上記取引の非公表条件を説明するものではなく、縫製工場・OEM/ODMの譲渡準備に関する一般的な確認事項です。供給体制の継続を考える際は、設備、人、工程、取引をつなげて示すと、自社の強みと引継ぎの課題を説明しやすくなります。
得意な製品と、品質・納期を支える工程
布帛、カットソー、ユニフォーム、スポーツ衣料などの得意領域を、対応素材、ロット、標準的な納期とともに整理します。サンプル、小ロット量産、補修・リメイクを扱う場合は、その工程も分けます。仕様書、検品記録、不良・手直しの記録があれば、技術を担当者の感覚だけに頼らず説明できます。
受注の継続性と、生産余力
取引先別の売上・粗利、受注残、継続年数、単価・支払条件を整理し、特定顧客への依存も示します。設備の稼働、繁忙期、外注先の対応範囲を合わせて確認し、追加受注に対応するための人員や投資を分けて説明します。将来の受注増加は、確定した契約と営業上の見込みを区別してください。
所有物と預り物、契約で決まる責任
ミシン、裁断機、検針機などは所有・リースを分け、保守状況と更新予定を記録します。生地、付属、仕掛品、型紙、データは、工場内にあるものがすべて自社所有とは限りません。取引基本契約や個別発注書で所有者、検収、不良対応、納期遅延時の取扱い、契約承継の条件を確認します。
自社ブランドや販売部門も持つ場合は、商標、商品台帳、販路別損益、店舗・ECの契約を分けて整理します。生産部門だけを譲渡するのか、ブランドや販売機能も含めるのかを明確にすると、対象となる資産・人員・契約を確認しやすくなります。
相談前に用意すると役立つ資料
- 決算書・月次試算表と、取引先別の売上・粗利・受注残
- 設備台帳、リース契約、稼働状況、修繕・更新予定
- 製品別の工程表、仕様書、検品基準、品質・納期の記録
- 職人・工場長・生産管理者の担当業務と、外注先の一覧
- 原材料・仕掛品・製品の在庫明細と、自社所有・預り品の区分
- 主要契約、支払・返品条件、繁忙期の資金繰り、借入・保証の状況
資料は揃っている範囲で構いません。未整理の項目は、その理由と確認先を記録します。たとえば工場長しか把握していない段取りや検品判断は、引継ぎに必要な期間を考える材料になります。
譲渡の目的と、人材・取引先への説明を先に考える
経営から退きたいのか、受注や設備投資を増やす協業相手が必要なのかで、検討する相手と手法は変わります。会社全体の譲渡、一部事業の譲渡、資本・業務提携について、経営権、資金の使途、譲渡後の役割を整理します。上記2件と同じ条件で取引できることを意味するものではありません。
雇用継続、工場の所在地、品質方針、代表者の引継ぎ期間など、残したい条件も共有します。株式譲渡と事業譲渡では雇用・契約の扱いが異なるため、従業員への説明や必要手続を個別に確認します。外国人材がいる場合は、在留資格や受入れに関する確認事項も整理してください。
初期の候補先打診では、取引先名や仕様書をすぐに渡すのではなく、商品分野や売上規模などから説明します。既存契約の秘密保持条項も踏まえ、開示先・時期・範囲を確認して進めます。
自社の引継ぎ条件を整理する
確認事項の全体像は縫製工場・OEM/ODM企業のM&Aをご覧ください。アパレルM&A総合センターでは、売却を決める前から譲渡の相談を受け付けています。譲渡企業様から当センターが受領するM&A支援手数料は成功報酬まで0円です。外部専門家などの第三者費用は対象外です。
